旅行者をターゲットとした犯罪 ー ヨーロッパのスリと詐欺 ー

11/01/2022

その他

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海外は総じて日本より治安が悪いと言えます。今回は、私がヨーロッパで経験したり見聞きしたりした、旅行者をターゲットとした犯罪についてお話しします。

本稿の関連動画を以下にアップしています。良ければご参照下さい。

https://youtu.be/0TRIrhGbHFQ

治安が悪いと言っても、身体的な危険がある場合と、スリや詐欺などの危険がある場合で、様相は異なります。米国は明らかに日本よりも身体的な危険があると思われますが、ヨーロッパは国によって濃淡はありますが、身体的な危険というよりは、スリや詐欺などの危険が主だと思います。

旅行者をターゲットとした詐欺で、私が一番驚いたのは、ミラノのレストランです。

モスクワに駐在していた当時、休暇でイタリアを旅行した時の事です。ミラノのホテルにチェックインしてから、コンシェルジェで勧められたホテル近くのレストランに食事に行きました。

メニューを見ながら料理と飲み物を注文し、食事を終えてから、ウエイターに勘定を頼みました。ウエイターはすぐに"機械作成の"勘定書を持ってきたのですが、私は違和感を感じました。料理と飲み物を注文する際に、メニューに記載された金額を見ながら、おおよその合計金額を予想していたのですが、その金額よりもかなり高かったのです。注文した料理と飲み物の値段をメニューと見比べたのですが、間違っていません。そこで、勘定書の金額を暗算で足してみると、合計だけがEuro20高くなっていたのです。

私はすぐにウエイターを呼んで、確認しました。ウエイターは初め、料理と飲み物のそれぞれの金額がメニューと違っていない事を主張したのですが、私が、合計のみが違っている事を指摘すると、何も言わずにすぐに勘定書を持って店の奥に行きました。

すると、マネージャーらしき年配の男性がニコニコしながら出てきて、私の肩を叩きながら、正しい合計の機械作成勘定書を差し出して、支払いを求めました。私は通常はクレジットカードで支払いをするのですが、その時はキャッシュで払いました。チップは全く払わなかったのですが、ウエイターは不服そうな様子は見せませんでした。

スリが多いのはパリです。

ヨーロッパの中ではラテン系の国に、旅行者をターゲットにしたこの手の犯罪が多いような気がします。

知人(日本人)と一緒にモンマルトルの地下鉄駅のホームで電車を待って、来た電車に乗ろうとしたのですが、ホームはそんなに混んでいなかったのに、何故かそのドアのところだけ人が大勢いて、もみくちゃにされながら、なんとか電車に乗り込みました。

すると、ドアが閉まるか閉まらないかの時に、知人が「財布が無い!」と叫びました。一緒に乗ってきた大勢の人達は、ドアが閉まる寸前にホームに降りていました。ところが電車が動き出すと、電車の開いていた窓から財布が投げ込まれました。知人が拾って中身を確認すると、現金だけが抜き取られていました。クレジットカードなどが戻って来て、知人は少しホッとしていました。

私は、コートの内ポケットのファスナーを閉めたところに財布を入れていたので、被害に会わずに済みました。

別の知人(日本人)は、同じような状態で名刺入れを掏られたのですが、窓から投げ戻されて実害は無かったそうです。

パリの地下鉄では、切符の自動販売機で困っている旅行者に、買い方を教えるフリをしながら、10枚綴りの回数券(カルネ)を買わせて、一枚だけを旅行者に手渡し、残りをこっそり持ち去る、というのもあるようです。


パリ地下鉄の回数券(カルネ)

1987年に出張でパリに行った時、空いた時間にルーブル美術館に行ったのですが、入場しようと並んでいると、ポラロイドカメラを持った若い男が寄って来て「写真を撮ってやる」と言いました。私は一旦は断ったのですが、男が「たった1フラン(約20円)だよ」と言うので、撮って貰う事にしました。

ところが撮影後に男は「50フラン(約千円)だ」と言うのです。私が「1フランと言ったじゃないか」というと「それは写真を入れる紙製のフレームの値段だ」と言います。私が拙い英語で「そんなのは聞いてない。」と怒鳴りまくると、男は引き下がって、どこかに行ってしまいました。恐らく、そう言われたら50フラン支払ってしまう日本人が多いので、日本人がターゲットにされていたのでしょう。

また別の時、妻と一緒にフォーブルサントノレ通りを歩いていました。ユーミンのアルバム「OLIVE」の1曲目「未来は霧の中に」に出て来る通りです。

反対側から歩いてきた外国人らしい白人中年女性二人連れが、ルーブル美術館への行き方を訪ねてきました。手に持っていた地図を広げて、指し示しながら質問するのですが、何か動きが不自然です。妻は警戒して、持っていた手提げバッグを抑えていたのですが、地図を持っていない方の女性が、地図の陰から妻のバッグに手を伸ばしたので、妻と殆ど握手をするような形になりました。妻が声を上げたので、私と二人で直ぐにその場を離れて、事無きを得ました。

フォーブルサントノレ通り

パリ市内とシャルルドゴール空港を結ぶロワシーバスは、パリ市内のオペラ座の横に発着場があります。私がシャルルドゴール空港行きのバスを待っていた時の事です。

ロワシーバス

日本人の若者のグループが、バスを待つ間に記念写真を撮ろうとして、オペラ座の正面のあたりに居たのですが、一人の男性が日本語の大声で「財布が無い!」と叫び始めました。

オペラ座

ロンドンは、身体的な危険という意味では東京以上に安全という事ですが、私の知人(日本人)はバス停でバスを待っている時に、手の込んだ詐欺に遭いました。

ロンドンのバス停

その知人と中南米系の男性がバスを待っていたところに、私服警官と称する人物が現れて、まずは中南米系の男性に職務質問を開始したそうです。警官は、無線でどこかと連絡を取りながら、パスポートなどの提示を求めた後で、クレジットカードを見せるように言い、中南米系の男性は素直にクレジットカードを見せました。警官はクレジットカードを見ながら、無線でどこかと話をして、中南米系の男性は開放されました。

警官は次に、私の知人にも職務質問を開始しました。まずパスポートの提示を求め、無線で連絡を行った後で、先ほどの中南米系の男性に対するのと同様に、クレジットカードの提示を求めました。ところがその知人は、インドに長く駐在していた人物で、インドで鍛えられた結果、大変疑り深い性格になっていました。警官に対して「クレジットカードは持っていない」と断ったのです。警官は「じゃあ財布を見せろ」と要求したのですが、知人は「財布も持っていない」と言い張りました。押し問答の後に、警官は諦めてどこかに行ってしまったそうです。

こういった偽警官詐欺は、イタリアでもあります。私はローマで、夕食後にホテルに向かって歩いている時に、車に乗った人物から「警察だ。止まれ。」と言われて、車で追いかけられないように、一方通行の道を逆方向に歩いて、難を逃れた事があります。

但しロシアでは、こういった犯罪に加担するのは本物の警官なので、注意が必要です。詳細は、以前の投稿「最強の反社は警察 ロシアの汚職(腐敗)」で説明していますので、参照下さい。

https://captflintsoldlogbook.blogspot.com/2021/08/blog-post.html

モスクワで、日本から来た出張者と夕食を食べていた時、出張者が上着を脱いで自分が座っている椅子の、背もたれに掛けていたのですが、勘定をする段になって、上着の内ポケットに入れていた財布が無くなっている事に気付きました。隣のボックス席のロシア人の客が、その出張者と背中合わせに座っていたのですが、どうもそいつに掏られたようでした。その出張者には悪いのですが、私は正直言って「海外での行動としては不注意だな」と思いました。

日本人は置き引きなどの犯罪に対する警戒心が薄いように思います。

知人(日本人)がニューヨークのホテルでチェックインしていた際に、財布やパスポートの入ったセカンドバッグをカウンターの上に置いていたのですが、横にいた男が「床に落ちている1ドル札はお前のか?」と聞いてきたので、かがんで1ドル札を拾い上げたら、セカンドバッグが無くなっていたそうです。

私は、財布は基本的にズボンの前ポケットに入れるようにしています。危なそうな時は、ポケットに手を突っ込んで財布を押さえます。

さて今回の、ヨーロッパでよくある旅行者をターゲットとした犯罪に関する話はここまでです。最後におまけで、ニューヨークJFK空港でのタクシー詐欺について、お話ししたいと思います。

私が以前勤務していた会社は、ニューヨークのダウンタウンにオフィスを構えていたのですが、そこでは、出張者がJFK空港からダウンタウンに行くのに支払ったタクシー料金のランキングを記録していました。当時、JFK空港からダウンタウンまでのタクシー代は、USD40~50くらいでしたが、到着ロビーにたむろして客引きをしている運転手について行くと、ほぼ確実にボッタクられました。

一人の出張者は、話しかけて来る運転手を無視しながらタクシースタンドに向かったのですが、「今日はイエローキャブはストだからタクシースタンドで待っていても来ないよ」と運転手が言うので、その運転手について行ってしまいました。ダウンタウンに向かう途中、多くのイエローキャブが走っていたので、騙された事はすぐに判ったのですが、時すでに遅く、ダウンタウンの目的地そばの空き地で車を停められ、USD200を請求されました。

このUSD200が長くランキングのトップだったのですが、ある日それを上回る記録が出ました。その出張者は、「ストレッチリムジンでダウンタウンまでUSD60」と言われ、快適な割に差額が小さいと判断して、それに乗り込んだそうです。ところが、その車が途中で停まって、助手席にもう一人の男が乗り込んできたので、出張者は「あれ、やばいかな。」と思ったのですが、案の定、目的地のそばの空き地で車を停められ、USD300を請求されました。

出張者は「USD60と言ったじゃないか」と抵抗したのですが、運転手はストレッチリムジンの向かい合わせの後部座席を数えて、「5席 X USD60 = USD300だ」と言ったそうです。

日本人ビジネスマンは、会社を通じて予約したハイヤーを使うケースも多いのですが、それをターゲットにした詐欺もありました。到着ロビーでハイヤーの運転手を探している風情の日本人ビジネスマンを見つけると、近づいて行って「迎えの車の運転手を探しているのか?」と話しかけ、会社名と名前を聞きます。ここで話しかけた運転手が「あ~。俺が迎えだ」と言えば、流石に怪しまれるので、振り向いて、たむろしている運転手の一団に「○○会社のMr.○○を迎えに来ているのはいるか?」と尋ねます。その中から「俺だ」と申し出る運転手がいるのですが、これらが全部グルなのです。

別のパターンは、日本人ビジネスマンのスーツケースのネームタグを見て、名前を確認してから、簡単なプラカードを作って、先回りして待っています。日本人ビジネスマンは「会社が気を利かせて手配してくれたのか~」などと思い込んで、乗ってしまう訳です。

私が知る限り、日本よりも治安の良い国はシンガポールだけです。機会を改めて、シンガポールの治安の良さとその背景について、考えてみたいと思います。それではまた。

本稿の関連動画を以下にアップしています。良ければご参照下さい。

https://youtu.be/0TRIrhGbHFQ

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ドイツ、インド、シンガポール、フィリピン、ロシアに、計17年駐在していました。今は引退生活を楽しんでいます。

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