今回は私が過去に訪れて印象に残った海外の美術館についてお話ししたいと思います。
本稿の関連動画を以下にアップしています。良ければご参照下さい。
私は特に美術に造詣が深い訳では無いのですが折角訪れた海外の街で有名な美術館に行かないのはもったいないと感じてしまうので結構多くの美術館を訪れています。海外に駐在していると日本からの出張者のアテンドをする機会が多いのも美術館を訪れる機会が増えた理由です。
私が初めて海外の美術館に行ったのは1987年のルーブルでした。
以前の投稿"旅行者をターゲットとした犯罪 - ヨーロッパのスリと詐欺 -"でお話しした通り、入場しようと並んでいる時にポラロイドカメラを持った若い男に写真を撮られてボッタクられそうになったのはその時です。中庭のナポレオン広場に設置されているルーブルピラミッドは1989年に完成した物なので私が初めて行った時にはありませんでした。1991~1995年にドイツ・デュッセルドルフに駐在している時や2008~2014年にモスクワに駐在している時にも度々パリを訪れる機会がありルーブル美術館にも累計で4~5回行きました。ルーブルは巨大な美術館なので端から順番に見たら時間がいくらあっても足りません。なのでいつも有名な展示だけを狙って見ています。
筆頭は何と言っても"モナリザ"です。私と同じ様に"モナリザ"を狙って見に来る人が多いので展示スペースはいつも込み合っています。
私が好きなのはドラクロワの"民衆を導く自由の女神"です。259 X 325cmという巨大な絵には迫力があります。
更に大きくて迫力があるのがダヴィッドの"ナポレオンの戴冠式"で621 X 979cmもあります。
彫刻で有名なのは"ミロのヴィーナス"です。"ミロのヴィーナス"の展示スペースもいつも込み合っています。
私が好きな彫刻は"サモトラケのニケ"です。"ダリュの階段踊り場"に展示されていて、これを見ると「ルーブルに来た!」と実感します。
ちなみに映画"タイタニック"でレオナルド・ディカプリオが船の舳先で両手を広げるケイト・ウィンスレットを支えるあの有名なシーンはこの女神をイメージしたものだそうです。
またナイキ(NIKEの英語読み)のブランドマークはこの女神の翼をデザイン化したものです。
パリで行った美術館の二つ目はオルセーです。オルセー美術館は元々鉄道駅舎兼ホテルだった建物を転用したものでルーブルほど大きくないので全ての展示物を見て回る事が可能です。私が好きなのは印象派及びポスト印象派でその筆頭はゴッホです。"自画像""オヴェールの教会""アルルの寝室"等の有名な絵を含む多くのゴッホの作品が展示されています。その他の有名な印象派の絵としてはルノワールの"ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会"マネの"草上の昼食"モネの"日傘の女"ポスト印象派ではゴーギャンの"タヒチの女たち"等があります。
印象派とポスト印象派以外ではミレーの"落穂拾い""晩鐘"等も馴染みがありますね。
パリで行った美術館の三つ目はオランジェリーです。"オランジェリー"とはシトロンやオレンジなどの為の温室を指す名称でオランジェリー美術館もそのような温室だったのを1927年にモネの"睡蓮"の連作を収める為に美術館として整備したものです。
その他の画家の作品も展示されていますがやはりオランジェリーと言えばモネの"睡蓮"が有名です。二つの部屋がモネの"睡蓮"の大装飾画で埋め尽くされています。
私は1991~1995年にドイツ・デュッセルドルフに駐在していた当時ソ連・東欧地域も担当していた関係でウィーンに開設した事務所の所長を兼務していたので3カ月に1回位のペースでウィーンに出張していました。ウィーンで有名な美術館の一つはベルヴェデーレ宮殿の上宮"オーストリア・ギャラリー"です。
クリムトのコレクションが有名ですね。"ユディトI(Judith I)""接吻""アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ"等見覚えのある作品が多いです。
ウィーンで有名なもう一つの美術館は美術史美術館です。
美術史美術館の売りはブリューゲルのコレクションです。"バベルの塔"が有名ですね。"農家の婚礼"は1980年代にTVコマーシャルで使われていたので見覚えのある人も多いと思います。
デュッセルドルフに駐在していた時には連休の度に欧州内を旅行していたので各地の美術館に行く事が出来ました。
アムステルダムでは国立美術館とゴッホ美術館に行きました。国立美術館で有名なのはレンブラントの"夜警"です。これも363 X 437cmと巨大です。
ゴッホ美術館には"The Potato Eaters""黄色い家""ゴッホの寝室""カラスのいる麦畑""自画像""ひまわり"等の有名な作品が展示されています。
マドリードではプラド美術館とソフィア王妃芸術センターに行きました。プラド美術館で有名なのはゴヤの"裸のマハ"と"着衣のマハ"ベラスケスの"ラス・メニーナス"等です。
ソフィア王妃芸術センターで有名なのはピカソの"ゲルニカ"です。これも349.3 X 776.6cmと巨大です。
フィレンツェではウフィツィ美術館に行きました。ウフィツィで有名なのはボッティチェリの"ヴィーナスの誕生"ですね。巨大という程ではありませんが172.5 X 278.5cmとそこそこに大きいサイズです。
フィレンツェで有名な彫刻はミケランジェロの"ダビデ像"です。元々シニョリーア広場に面した市庁舎(ヴェッキオ宮殿)の正面入口脇に置かれていたのですが、1873年にアカデミア美術館に移され元あった場所にはレプリカが置かれています。
美術館ではありませんがバチカンのシスティーナ礼拝堂ではミケランジェロの"最後の審判"と"アダムの創造"を見ました。ドイツに駐在していた時にシスティーナ礼拝堂に行く機会があったのですが"最後の審判"は当時修復作業中だったのでモスクワ駐在時に行った際に漸く見る事が出来ました。
残念だったのはミラノでレオナルド・ダ・ヴィンチの"最後の晩餐"を見られなかった事です。ミラノへの旅行日程を決めてからインターネットで見学の予約をしようとしたのですが既に一杯だったのです。"最後の晩餐"は相当余裕を持って見学予約をしなければならないので個人旅行で見るのは難しいかもしれませんね。
これも美術館ではありませんがベルギーのアントワープでは聖母大聖堂でルーベンスの絵を見ました。フランダースの犬"のネロとパトラッシュが最期に見た"キリスト昇架"と"キリスト降架"です。ちなみに日本では誰でも知っている"フランダースの犬"ですがベルギー人は殆ど知らないそうです。
2008~2014年にモスクワに駐在していた時にはモスクワとサンクトペテルブルクの美術館に行きましたが、それ以外にも休暇で西ヨーロッパに出ると美術館に行っていました。
ロシアの美術館と言えばNo.1は何と言ってもサンクトペテルブルクにあるエルミタージュです。出張者のアテンド等で駐在期間中に数回行きました。
エルミタージュの代表的な作品の一つはレオナルド・ダ・ヴィンチの"リッタの聖母"ですね。
エルミタージュの印象派とポスト印象派の作品の一部はモスクワのプーシキン美術館別館に移された為に同じシリーズの絵が分かれて展示されています。例えばルノワールの"女優ジャンヌ・サマリーの肖像"は劇場のロビーに立つ全身像はエルミタージュに、左手で軽く頬杖をついて微笑みながらもの思いにふける半身像はプーシキンにあります。
全身像は1988年に東京で開催された"エルミタージュ美術館展"のポスターに使われていたので記憶にある方もいると思います。
マチスは"ダンス"がエルミタージュに"金魚"がプーシキンにあります。
その他にもゴッホ、ゴーギャン、ルソー他の多くの印象派・ポスト印象派の作品がエルミタージュとプーシキンに分かれています。
プーシキンだけにあってエルミタージュに無いのがピカソです。プーシキンのピカソはキュビズム以前の"青の時代"と"薔薇色の時代"の作品が主です。
モスクワの美術館でもう一つ有名なのがトレチャコフです。トレチャコフはロシア美術に特化した美術館です。なので私の知らない画家の作品ばかりなのですが何かの機会に見た事のある作品が多くあります。
最も有名なのは"見知らぬ女"でしょう。
それ以外にも"ドストエフスキーの肖像""桃を持った少女""フョードシヤ・モロゾワ"等見覚えのある作品が多くあります。
モスクワから休暇でスウェーデンとノルウェーを回った際にはオスロのムンク美術館に行きました。ムンクの"叫び"ですね。美術館のカフェでは"叫び"ケーキを売っていました。
チェコのプラハではミュシャ美術館に行きました。ミュシャのポスターは日本でも人気がありますね。
ロンドンでは他に見たい物や行きたい所が沢山あり過ぎて中々美術館に行く機会が無かったのですが、J.E.ミレーの"オフィーリア"だけを見にテートブリテンに行きました。テートブリテンは入場無料だったのでその様な事が出来ました。
欧州以外では1987年の出張時にニューヨーク近代美術館に行きました。MoMAの略称が有名ですね。
MoMAと言えばアンディ・ウォーホルです。キャンベルのスープ缶とマリリンのディスパッチが有名です。
1987年に行った時には西武百貨店の"おいしい生活"のポスターが展示されており誇らしい気持ちになりました。
MoMAにはポップアートだけでなくゴッホの"星月夜"やルソーの"眠るジプシー女"等の有名な絵も展示されています。
さて最後に番外編として印象に残った海外の博物館についてお話ししたいと思います。ロンドンの大英博物館はビートルズ関連の展示を見る為に行ったついでに他の展示物を見る感じで有名なロゼッタストーンなども見ました。
以前の投稿"ビートルズ巡礼"でもお話ししましたがリバプールではビートルズ博物館"ビートルズストーリー"に行きました。ビートルズファンのリバプール訪問時には必見の場所です。
大変印象深かったのはベルリンにある"ペルガモン博物館"でした。ペルガモン博物館は古代ローマやギリシャのモニュメントを原寸大で復元した事で有名です。普通の博物館は発掘した遺物をそのまま展示すると思うのですがペルガモン博物館では遺物を集めて足りない部分を付け足し巨大な構造物を復元しているのです。博物館の名前の由来にもなっている"ペルガモン祭壇"は迫力満点です。
"イシュタール門"も同様にバビロニアの古都バビロンの中央北入口の門を飾っていた装飾が博物館内に再構築されています。
考えさせられたのはスコットランド国立戦争博物館でした。日の丸の寄せ書きが戦利品として飾られていたのです。英国人にとっては訳の分からない文字が書かれた敵国の国旗ですが、私にはそれを持っていた兵士の親族・関係者の名前とメッセージが読めてしまうので悲しい気持ちになりました。
ロンドン塔を見学した時に破壊された箇所の看板に「ドイツのロケットにより破壊された」と書かれているのを見た時も複雑な感情がありました。
さて今回の海外の美術館のお話はここまでです。楽しんで頂けたでしょうか。海外で見たその他の名所・旧跡等についてはまた機会を改めてお話ししたいと思います。それではまた。
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