インド人の特徴 ー インドよもやま話#2 ー

26/07/2021

インド

t f B! P L

今回はインドについて、前回の続きをお話ししたいと思います。

本稿の関連動画を以下にアップしています。良ければご参照下さい。

https://youtu.be/aCAIQNf2L2Y

これはおそらく宗教と深く関わっていると思うのですが、インド人は生き物を殺す事をなるべく避けようとします。対象が犬や猫であれば、欧米人も日本人も優しい気持ちで接しますが、インド人はその対象を蚊などの小さな虫にまで拡大します。

我々は、蚊の飛ぶプーンという音が聞こえたら、反射的に叩いて殺そうとしますが、インド人は、蚊を払いのけるだけで殺さないのです。

私はインドで、運転手付きの社有車を使っていたのですが、車の中で蚊を見つけると、一所懸命叩いて殺そうとしました。蚊はマラリアやデング熱などの病気を媒介するので、インドで蚊に刺されるのは危険な事なのです。

当時使っていたインド製ベンツと同型の車両(インド製は右ハンドル)

ところがインド人の運転手は、絶対に叩いたりせず、窓を開けて蚊を車の外に出そうとするだけなのです。蚊は人間の呼気中の二酸化炭素に反応して近づいてくるので、なかなか車の外には出ないのですが、一所懸命手で払って外に出します。

これは私の推測ですが、おそらく私が蚊を叩いて殺しているのを見ていた運転手は、私達が犬や猫を蹴り殺している人を見た時と同じような気分になっていたのではないかと思います。

もう一つの例は、ネズミです。最近の日本の家庭にはネズミ捕りの籠などはあまりないと思いますが、私が幼かった頃は、ネズミが多かったらしく、東京の我が家にもネズミ捕りがありました。

ネズミ捕りの籠

このネズミ捕りの籠というのは、中に餌を付けておいて、ネズミが中に入って餌を食べようとしたら入口が閉まる、というものですが、ネズミを捕まえた後は、それを水に浸けてネズミを溺死させてから、死骸を処分します。

ところが、私のインドの知人(日本人)宅の使用人(インド人)は、ネズミが入った籠を持って外に出て、家から数十メートル離れた場所で、そのネズミを放していたそうです。インドではみんながこれをやっているのですから、ネズミが減る事はありません。

こういった「生き物を殺す事をなるべく避けようとする」という背景があり、インドにはベジタリアンが大勢います。感覚的には、中流以下よりも上流階級のベジタリアン比率が高いような気がします。ベジタリアンの中にも種類があり、最も厳格なものでは、肉や魚だけでなく卵や乳製品なども禁忌となっています。

なので、インドの航空会社の運航する飛行機に乗ると、CAは”Beef or Chicken?”ではなく”Veg or Non-Veg?”と聞いてきます。

エアインディアのCAはサリーを着ている

もっとも、インドでは牛は神様の乗り物として神聖ですので、インドの航空会社が機内食で牛肉を供する事は、もともとあり得ませんが。また、インドには一定割合(約13%)のイスラム教徒もいますので、豚肉を供する事もありません。

よって、このCAの質問に対して、”Non-Veg, please.”と返事すると、出て来るのは魚かチキンかラム(またはマトン)です。

インドにはマクドナルドも進出しています。マクドナルドは、インドが一連の経済改革を開始した1991年から進出検討を開始し、1996年に1号店をオープンしました。

マクドナルド・インド1号店

インドの人口の多さと高い経済成長率に基づく、巨大な潜在市場を見据えた進出です。マクドナルドの先見性と、困難を恐れずに新たな市場を開拓する姿勢は、すごいものだと思います。ちなみにその1年前の1990年には、ソ連崩壊前のモスクワにロシア1号店をオープンしています。

マクドナルド・ロシア1号店オープン時の行列(モスクワ)

私はよく、ニューデリー市内のマクドナルドに行っては、テイクアウトでフィレオフィッシュを買って、持ち帰って食べていました。当時のインドは今と違って、近代的なショッピングモールなどは皆無だったので、マクドナルドも汚い商店街の中にありました。そのためマクドナルドの店内で食事をする気になれず、テイクアウトしていたのです。

ノンベジバーガーのパテはマトンで、ベジバーガーは、ハッシュドポテトが挟んであるという事でした。ビッグマックの替わりに、マハラジャマックというものがありました。私は、日本のマクドナルドと同じフィレオフィッシュしか注文しなかったので、残念ながらベジバーガーもマハラジャマックも、食べた事はありません。

最近のマクドナルド・インドのメニュー *緑のマークはベジ、赤のマークはノンベジ
(パテはどこかの時点で、マトンからチキンに変更された)

今になって思い返すと残念な気もしますが、インドに住んでいた時は、可能な限りインド料理以外の物を食べるようにしていたので、敢えてフィレオフィッシュ以外のメニューをオーダーしなかったのです。

私も今では、時々インドレストランに行って食事をしますが、インド離任後5年くらいは、インド料理を避けていて、自分から進んでインド料理を食べる事はありませんでした。インドに住んでいる時は、インド料理以外の選択肢が無いシチュエーションが多い為、選択できる時はインド料理以外を選択する事が癖になってしまっていたのです。

さて、このベジタリアンの多さから言えるのは、総じてインド人というのは、食べる事に対する関心が低い、という事です。食に貪欲な中国人と好対照です。

ポルトガル人もフランス人も、インドにやってきたのですが、インドの食文化に耐えられなかったので、食に無関心なイギリス人だけがインドを植民地に出来た、という事です。

もうひとつのインド人の特徴は、時間に対する感覚です。インド4千年の悠久の歴史がそうさせるのか、どうもインド人にとって時間は無価値なようです。輪廻転生を繰り返すので時間は無限にある、という考え方なのかもしれません。無限にあるものは、確かに無価値です。

輪廻転生図

無価値なものを“無駄にする”事はあり得ませんので、彼等には「時間を無駄にする」という考え方は存在しません。

私の小学校時代の担任の先生はしばしば、遅刻してきた生徒に、「君は5分遅刻した。ここにいる40人が君の事を待っていた。よって君は200分を無駄にした事になる。」などとお説教をしていましたが、インド人には全く理解されない事になります。インド人は、他人をいくら待たせても相手に何ら損害を与えないと考えるので、時間を守る事に意味を見出さない訳です。

私がインドにいた時、取引先インド企業のパーティーに招待された事があります。午後7時開始予定だったので、私は「インド時間だから遅めに行こう」と考えて、7時30分にパーティー会場のホテルに行ったのですが、招待客だけでなく、主催者もまだ来ていませんでした。

インド人と話している時に、気をつけた方が良いのは、”2”という数字です。

英語では「ちょっと待って」という時に”Wait a minute.”と言ったりしますが、インド人は”Wait two minutes.”という事があります。インドでは、どれくらい待たせるかはっきり判らない時に、”2”という数字を使うのです。

なので”Wait a minute.”と言われた時には、待ち時間はさほど長くはならないと考えられますが、”Wait two minutes.”と言われた場合は、相当長く待たされる事を覚悟した方が良いでしょう。

この、判らない時に使う”2”は、1分、2分の”分”のみに限りません。

ある日系企業がインドに駐在員事務所を開設しようとして、米系会計事務所のインド現地法人を通じてインドの監督官庁に駐在員事務所開設認可申請しました。

2月に申請を出し、会計事務所のインド人に「どれくらいで認可が下りるか?」と問い合わせたところ、「2週間以内」という回答だったので、4月1日付で新たな駐在員の人事異動を発令しました。

ところが4月になっても認可が下りません。会計事務所に「いつ認可が下りるのか?」と問い合わせると、また「2週間以内」という回答ですが、2週間が過ぎてもやっぱり認可が下りません。その後もいつ認可が下りるか問い合わせるたびに、「2週間以内」という回答が繰り返されました。

最終的に認可が下りて駐在員が赴任したのは12月だったのですが、会計事務所のインド人は、全く悪びれずに「認可が下りて良かったね」と言ったそうです。

さて、「国際会議で止めさせるのが難しいのは、インド人の発言と日本人の居眠り」というジョークがあります。インド人の自己主張の強さは、日本人より遥かに自己主張が強い欧米人から見ても、辟易するもののようです。

私はインドで多くのセミナーに参加しましたが、驚かされたのは、質問の挙手をするインド人の多さです。日本のセミナーでは、質問する人が少なすぎる事を予想して、質問者のサクラを用意したりしますが、インドでは、セミナーの終わりに質問を募ると、多くの人が一斉に手を上げます。

ところが多くの場合、質問者はマイクを受け取ると、質問をするのではなく、セミナーのテーマに関して滔々と自説を述べます。セミナーは、当然ながらそれなりの見識を持った人が講師になります。ところが質問者は、場合によっては、私より遥かに劣る知識しか無かったりもします。この、レベルの低い意見の発表が、延々と繰り返されるのです。

私達はそんな発表を聞くのは時間の無駄と考えて、「それは質問じゃないだろ!」と怒ってしまいますが、インド人にとって時間は無価値なので、怒る人はいません。

さて、インドよもやま話もそろそろ終わりなのですが、最後にインドを褒める話を2つします。

一つ目はインド人の頭の良さです。私は、インド人は知能指数の平均値が高いのではないかと考えています。彼等の優秀さは、米国の大企業の多くでCEOを務めている事からも判ります。米国の副大統領のカマラ・ハリスさんも、インド系ですね。

アルファベット&グーグルCEOサンダー・ピチャイ

マイクロソフトCEOサティア・ナデラ

マスターカード会長アジェイ・バンガ

ノバルティスCEOヴァサント・ナラシンハン

デロイトCEOパニー・レンジェン

アメリカ合衆国副大統領カマラ・ハリス

典型例は計算能力です。掛け算は、9×9ではなく99×99まで暗記しているという話です。私の同僚(日本人)は、インド人と電話で割引交渉をした際に、小数点第3位までの係数に対する割引率を複雑に変えながら、口頭で説明されて、全くついて行けなかったと言っていました。

判らないままにOKしそうになるのを、踏み止まって「Eメールで回答を送ってくれ」と逃げたそうです。

この場合、良く判らないままにOKするのは、大変危険です。インド人は頭は良いのですが、お人よしではありませんから。

北インドのインド・アーリア系の方が、白人っぽい人が多いのですが、私の独断では、南インドのタミル系の方が、より頭が良いように感じます。

北インド インド・アーリア系

南インド タミル系

もうひとつの褒める点は、インドの正義感です。

インド独立の父マハトマ・ガンジー

インド独立運動の闘士チャンドラ・ボース

第2次大戦後の東京裁判において、インド人のパル判事がただ一人、被告人全員の無罪を主張した意見書を出しました。パル判事は、東京裁判に連合国が派遣した判事の1人ですが、「この裁判は方向性が予め決定づけられており、判決ありきの茶番劇である」として裁判自体を批判しました。

パル判事

そして「『平和に対する罪と人道に対する罪』は戦勝国により作られた事後法であり、事後法をもって裁くことは国際法に反する」などとして、被告人全員の無罪を主張したのです。

またインドは、サンフランシスコ講和会議に招請を受けましたが、「日本に名誉と自由を、他の国々と同様に与えるべきである」として会議への参加と条約への調印を拒否しました。

サンフランシスコ講和会議で演説する吉田茂首相

ただし、日本との関係回復を否定するものではないとして、サンフランシスコ講和条約とほぼ同じタイミングで、個別に日印平和条約を締結しました。

インドは特に親日という訳ではなく、日本に忖度してこれらの事をしたのではありません。あくまでも公平公正な立場に立って判断し、正義を行ったのです。このインドの、状況に流されずに筋を通す姿勢は、世界でもずば抜けていると思います。

さて、2回に亘ってインドについて思いつくままに話をしてきたのですが、ここで一旦終わります。またインドについて話したい事が出てきたら、第3回としたいと思います。それではまた。

本稿の関連動画を以下にアップしています。良ければご参照下さい。

https://youtu.be/aCAIQNf2L2Y

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ドイツ、インド、シンガポール、フィリピン、ロシアに、計17年駐在していました。今は引退生活を楽しんでいます。

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